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【本】短命に終わった名投手の栄光と挫折を綴るノンフィクション文庫版が発売

2017年7月28日

沖縄在住の作家・松永多佳倫(まつなが・たかりん)氏の書籍「マウンドに散った天才投手」の文庫版が発売された。

松永氏は、岐阜県出身の作家。琉球大学法文学部卒業後、出版社勤務を経て、沖縄を拠点に執筆活動をしている。これまで、映画化もされた「沖縄を変えた男 栽弘義-高校野球に捧げた生涯」(集英社文庫)、「最後の黄金世代 遠藤保仁 79年組それぞれの15年」(ダ・ヴィンチブックス)などスポーツノンフィクションを中心に執筆。

「マウンドに散った天才投手」では、絶頂期が短く、プロ野球人生の大半をケガや病気との闘いに過ごした7人を取り上げている。

本書は取り上げる選手ごとに7部構成。鮮やかな高速スライダーを放ったヤクルトの伊藤智仁にはじまり、近藤真市(中日)、上原晃(中日)、石井弘寿(ヤクルト)、森田幸一(中日)、田村勤(阪神)、そして、脳腫瘍に悩まされた盛田幸妃(近鉄)の7人。

伊藤は社会人野球からドラフト1位指名でヤクルトに入団。ルーキーイヤーで「1回実績を作ってしまえば」という思いにこだわり、無理をしてしまった。2002年復活をかけたマウンドでの9球を振り返り、伊藤は「球団に責められて」という言葉で表現している。

この件に関して、松永氏は伊藤のリハビリをつきっきりで見ていた谷川コンディショニングコーチにもしっかりと取材しており、谷川氏のコメントも印象的に響く。

そんな伊藤は、あの古田敦也も野村克也も「今まで受けてきた中で一番凄いピッチャー」「今まで見た中でナンバーワンのピッチャー」と言わしめる存在。「ケガがなかったら…」と無意味な想像をしてしまうのも、無理はない。

3人目の上原は、沖縄における高校野球の名門・沖縄水産出身のピッチャー。松永氏も沖縄在住のため、上原とは「何度か会う機会があり」というように、ほかの選手以上に本音を引き出せているように感じる。

関係性を強めていく中で、上原は自分の野球人生を「満足の中で辞めているわけじゃない」「諦めがつかないよね」という言葉で表現している。星野仙一監督は「イキのいいピッチャーを1年目からバンバン使い、潰してしまうという無茶な起用法がファンの間で物議を醸した」という言葉を用いて、松永氏もその視点を持って質問をするが、「潰されたとは思っていない」、あとがきにも「酷使なんかじゃないさぁ」という返答が来る。これも本音だろう。

一方で、次章の石井のインタビューでは「後悔していない」という言葉を数え切れないほど使っていたと振り返る。選手によってさまざまだが、松永氏は「思いは裏腹」と読み解いている。

それにしても、松永氏の取材力はただただ、すごい。先の伊藤のリハビリを担当した谷川コンディショニングコーチの件もそうだが、第6章の田村への取材のところにある「デビュー戦での事件」も興味深い。

ところで、2013年の沖縄キャンプの際、最終章で取り上げた盛田に同書の単行本を渡したところ、著者は「なんだ、(伊藤)智への思いばかりじゃねえかよ。俺じゃなかったの?」という言葉を掛けられたというエピソードを披露している。

「ん?」と思い、文庫版のページ数を調べてみた。第1章より、53、29、29、31、29、33、58ページ。そう、最終章ではあったが、松永氏はしっかりと紙幅を費やして盛田への思いを綴っている。

そして、「文庫版あとがき」で松永氏は「You Tube等の動画サイトによって大昔の映像も簡単に観ることができる」とアドバイスを書いている。読み終わったら、さっそくパソコンを開いてみよう。

「マウンドに散った天才投手」
発売中 918円(税込) 講談社+α文庫