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甲子園春夏連覇の興南野球部員の10年を追うノンフィクション

2020年8月1日

沖縄県在住の作家・松永多佳倫(まつなが・たかりん)氏の新著「まかちょーけ-興南甲子園春夏連覇のその後-」(集英社文庫)が、7月17日、発売された。

松永氏は、1968年、岐阜県生まれ、沖縄県在住の作家。沖縄県書店大賞を受賞した「沖縄を変えた男 栽弘義-高校野球に捧げた生涯」(集英社文庫)のほか、「マウンドに散った天才投手」(講談社+α文庫)、「最後の黄金世代 遠藤保仁 79年組それぞれの15年」(KADOKAWA)、「偏差値70からの甲子園 僕たちは野球も学業も頂点を目指す」(集英社文庫)など、スポーツノンフィクション系を中心に著書多数。

本書のタイトル「まかちょーけ」は、「まかしとけ」を意味する沖縄の言葉。2010年、沖縄・興南高校の野球部が甲子園の春と夏の大会において、史上6校目となる連覇を達成した、その部員たちの10年間を追ったノンフィクション。

第一章の「散った春夏連覇投手 島袋洋奨(しまぶくろ・ようすけ)」に始まり、第二章「究極の文武両道 国吉大将・大陸」、第三章「未完の大砲 眞榮平大輝(まえひら・だいき)、第四章「本音の辺野古 我如古盛次(がねこ・もりつぐ)」、第五章「沖縄を変える男 我喜屋優(がきや・まさる)」の本編に、今年5月に行われた我喜屋氏と島袋の特別対談が収録されている。

いきなりとなるが、本書で松永氏が本当に書きたかったのは、「少し長めのあとがき」ではなかっただろうか。このあとがきには、“メンバー外”と呼ばれる、いわゆる甲子園の選手登録18人に惜しくも漏れてしまった部員のことが記されている。

著者曰く「普通の高校生では絶対に味わわない屈辱に10代で直面したにもかかわらず、逃げることなく野球を続けた彼らの強さはどうやって生まれたのか」を探るため、春夏連覇の時の2010年度に卒業した部員45人中ほぼ全員に直接会い、話を聞いた。

それは、試合に勝っても相手チームの前ではガッツポーズを見せないように指導する、他のメンバーが後片付けをしているのに早々とバスに乗り込むベンチ入りメンバーを叱り付ける、そんな “相手の立場に立って物事を考える” 我喜屋氏の指導方針にも重なるが、我喜屋氏や部員たちの声を丹念に取材してきた松永氏だからこそ、この1冊をまとめるにあたり、“メンバー外“の人たちの声が非常に意味のあるものだったであろうことが推測される。

大学時代、プロ時代と苦しい野球人生を歩んだ島袋、早い段階で今後の人生の決断を下した国吉大将・大陸、あまりにも不器用だった眞榮平、そして我如古のことでは、昨今全国的に話題となっている辺野古問題にも言及するなど、今回も、いや、いつも以上に丁寧な取材力と類まれな文章力で読ませる。

そして、我喜屋氏の「沖縄はまず教育を最重視しなければいけない。基本を守ることこそが成長発展に繋がる」という力強い言葉。この「まかちょーけ」という言葉を沖縄県民が心の底から発し、彼らの手でよりよい沖縄に変わっていく…松永氏は、部員たちの取材を重ねる過程で、“彼らのような若者が支える沖縄の未来は、きっと大丈夫”、そんな想いでこのタイトルを冠した、と考えてしまうほど、単なる高校野球ノンフィクションに終わらない読み応えのある作品に仕上がっている。

「まかちょーけ-興南甲子園春夏連覇のその後-」
発売中 770円(税別) 集英社文庫