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石垣島の自然や文化を今に伝えたある自然観察者の物語

2022年1月14日

沖縄・石垣島の測候所所長(現在の石垣島地方気象台)として、気象だけでなく、自然観察者として生きた正木任(まさき・つとむ)氏の半生を紹介した書籍「石垣島の自然観察者 正木任の残したもの『ツトムの虫』を探して」(ボーダーインク)が発売された。

著者は、沖縄大学の学長で、生物や自然に対する造詣が深く“ゲッチョ先生”の愛称で親しまれる盛口満(もりぐち・みつる)氏。盛口氏は、戦前、石垣島にて自然観察者として35年の短い生涯を閉じた正木任氏をモチーフに、残された資料や任氏の次男・譲(ゆずる)氏らに取材を重ねて1冊にまとめ上げた。

序章で本書執筆の背景などに触れ、第1章では、正木任氏に大きな影響を与えた、任氏の前に石垣島測候所長を務めた岩崎卓爾(いわさき・たくじ)氏と彼の発見した生物について、第2章では、任氏と自然観察者としての功績について、第3章では任氏の後を追うように気象観測の道に進み、南大東島地方気象台の台長などを務めた譲氏への取材でまとめた「継いでいくものたち」、そして「終章」と続く。

1冊を通じて、2人が生きてきた功績と、2人が関わり“イワサキ“や“マサキ”の名が付いた生物をイラストも多用しながら紹介している。

卓爾氏も任氏も石垣島測候所長で、本来の仕事としては気象学が専門だが、両氏とも昆虫や自然についても学者顔負けの知識力を誇った。その理由の一つが譲氏のコメントから伺い知ることができる。「岩崎さんは、測候所に“あれ、何ですか”と聞きに来た人に、いちいち、説明をしていた」「“こんな鳥がいたんですが、何ですか”とか、そういうことが気象台にもちこまれた」。こういう形で地域の人との交流が生まれ、「(地域の)みんなが博学になっていく」という好循環が生まれていた。

1943年3月、神戸から台湾に向かう高千穂丸に乗船した任氏だが、その高千穂丸は台湾沖でアメリカの潜水艦の雷撃で撃沈されて亡くなってしまう。その約1カ月前の2月、任氏は家族に宛てた手紙で「8月までに一冊を著す計画を立てている」と記している。だが、その思いを果たせぬまま帰らぬ人となった。

盛口氏が本書をまとめた理由として、生物の観察成果をまとめたかった任氏の思いがあった。盛口氏は本書をまとめ上げていく中で、譲氏の言葉から、卓爾氏や任氏の思いがしっかりと受け継がれていることに感動し、その思いが行間からしっかりと伝わってくる。

卓爾氏、任氏の功績を伝える意義はもちろんだが、本書を通じて、本業以外のことに関心を持ち、労を惜しまないそんな卓爾氏、任氏、そして、譲氏のような“懐の深さ”に感動を覚える1冊に仕上がっている。

「石垣島の自然観察者 正木任の残したもの『ツトムの虫』を探して」
発売中 1,980円(税込) ボーダーインク