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球界レジェンド5人の“確執”の裏にあった真実の物語が続々

2022年6月1日

沖縄在住の作家・松永多佳倫(まつなが・たかりん)氏は、このたび、書籍「確執と信念 スジを通した男たち」(扶桑社)を刊行した。

松永氏は、1968年、岐阜県生まれ、沖縄県在住の作家。沖縄県書店大賞を受賞した「沖縄を変えた男 栽弘義-高校野球に捧げた生涯」(集英社文庫)のほか、「マウンドに散った天才投手」(講談社+α文庫)、「最後の黄金世代 遠藤保仁 79年組それぞれの15年」(KADOKAWA)、「偏差値70からの甲子園 僕たちは野球も学業も頂点を目指す」(集英社文庫)、「まかちょーけ-興南甲子園春夏連覇のその後-」(集英社文庫)など、スポーツノンフィクション系を中心に著書多数。

「確執と信念 スジを通した男たち」は、情報誌「週刊SPA!」(扶桑社)で連載していたプロ野球をテーマにした記事をベースに再取材・再構成してまとめたもの。

球界のレジェンドである、門田博光氏、谷沢健一氏、田尾安志氏、広岡達朗氏、江夏豊氏の5人にスポットを当て、理不尽な物事に対しても、己を貫き、正々堂々と立ち向かった5人の信念と生き様に迫った渾身の1冊。著者自身、「過去最高の出来」「頭の中で仮説を立て検証し、考察を重ねて、一度書いてもすぐに消し、とことん熟考した」と表現するなど、この言葉だけでも、これまでのアプローチとは違う手法で、苦心の末に生み出されたことが分かる。

本書は、かつて22歳という若さで南海ホークス(現在の福岡ソフトバンクホークス)の最年少レギュラーとなった門田氏からスタート。野村克也監督のもと、徹底的に管理された中でプレーしていた門田氏と、その野村監督との“確執”はメディアにも書かれたことで有名だが、“確執”という二文字だけでは語り尽くせないエピソードが綴られていく。

さらに、後半は門田氏の選手生活の話に発展。弱小球団で4番打者を長く務めたが、「シーズン前半でペナントの行方が決まることも何度かあり、そのたびに気持ちを切らさないことを心がける毎日が続いていく。この作業ほど虚しいものはなく、自分で厳しく律しないとジワジワとメンタルまでやられてしまう」と、4番ならではの期待と結果を求められることの重圧にさらされていた。

偉大な結果を残したものの、門田氏はこれまでプロ野球の監督やコーチに就任したことはない。“依頼がひとつも来なかった”という噂について、松永氏は真偽を確かめるべく、質問をぶつける。すると、「あまり言うてないことやけど…、二回話があった」と、これまで語られなかったエピソードを口にする。

続いては、東北楽天ゴールデンイーグルスの初代監督を務めた田尾氏が登場。中日ドラゴンズで活躍した選手時代のエピソードと共に、楽天の監督時代の話も言及される。

特に、“新設球団の監督就任は狂気の沙汰だとわかっていた”にもかかわらず、田尾氏は監督に就任する。“数年かけて理想のチームを創り上げられる”と思っていた田尾氏だったが、結果を急ぐオーナー・三木谷浩史氏との食い違いが大きく、結果的には1年で解任されることになる。

田尾氏から語られるその頃のエピソードは読み手として考えさせられることも多いが、彼の「弱いチームでも応援してくれるファンがいるわけで、その人たちに何を感じてもらうのかが大きい」という言葉は、彼の懐の大きさとプライドの高さを感じさせる。

松永氏の熱い思いを認めた手紙から縁が生まれたという広岡氏は、プロ入りする前の東京六大学時代はもちろん、“広岡イズム”のきっかけとなった出生時の話も盛り込まれた。そんな広岡氏の話の中心は、彼が“「凄い」という感情を通り越して恐ろしさを感じた”と表現する川上哲治氏とのエピソードだ。

全体的に、プロ野球選手という職業に誇りを持つ広岡氏ならではの“反骨と改革”の歴史がつづられる。そんな彼の誇りについて、松永氏は「優勝を何回したとか誰々を育てたということより、野球に対して一点の曇りもなく真摯に向き合い続けたこと」と分析する。そして、同章のラストに、松永氏が本書を発行する上での“矜持”のようなことが語られている。インタビュアーである松永氏、インタビュイーである広岡氏の“本気のぶつかり合い”が、この本を生んだといっても過言ではない。

中日ドラゴンズで活躍した矢沢氏は、選手時代のエピソードや中日ドラゴンズという球団の特殊な面に関する話を展開。プロだけでなく、東京大学野球部の臨時コーチを務めるなど、行動力の高さとその手腕に関するエピソードもかなり興味深い。

そして、ラストは江夏氏。江夏氏こそマスメディアの報道で人物像が作られ、それに本人も翻弄されてきた。そんなことがよく分かる内容が続く。“阪神時代のお家騒動”についてなど、彼の記憶力もあり、事細かくつづられていく点がまさにドキュメンタリーテイストを醸し出し、読み手はついつい引き込まれてしまう。

“江夏の21球”などレジェンド的なエピソードが先行する江夏氏だが、読書と麻雀で現役時代の心のバランスを支えていたという繊細さもつづられ、驚かされる。

「あとがき」によると、江夏氏の章について、松永氏は“ラブレター”のテイストで書いたという。それ故か、メディアでの印象とは全く違う、江夏氏の“やさしさ”が伝わってくる内容となっている。

本書は、野球好きはもちろん楽しめるが、松永氏の作家としての覚悟を感じ取るだけでも十分に読み応えのある1冊となっている。

「確執と信念 スジを通した男たち」
2022年4月15日(金)発売 2,200円(税別) 扶桑社